クマゼミの羽化と月下美人

kumazemi
クマゼミの羽化

仕事がうまくいかなくて久しぶりに残業した夜。

台風の影響で雨が降ったおかげか、最近の熱帯夜が嘘のように涼しい。

時刻は午後10時近い…数年前まではこの時間になることも珍しくはなかったが、働き方改革のおかげか最近はめっきり残業が少なくなった。

久しぶりの残業で頭も身体もクタクタだ。

もう妻も子も寝ているだろうなと思いながら自転車で帰宅すると我が家の基礎部分に発光する何かを見つけた。

ギョッとして恐る恐る近づくと、なんと蝉が羽化を終えたところであった。

発光しているように見えたのは自転車のライトが羽化したばかりの色素の薄い蝉に反射していたようだ。

蝉を美しいと感じたのは人生で初めてだった。

虫が苦手というわけではないが、蝉はあまり好きではない。

まず見た目が気持ち悪い。子どもの図鑑で蝉がカメムシの仲間だということを知って妙に納得いった。僕にとって嫌われる虫群なのだ。

中学の頃、坊主めくりで5連続で『蝉丸』を引いたのもトラウマになっているのかもしれない。

そしてなにより騒がしい。こいつらが鳴くだけで真夏の気温が2℃くらい上がっているんじゃないかと疑いたくなる。

世の中に蝉が好きな人なんていないんじゃないかと本気で思っていた。

しかし身近に蝉が好きな人間がいたのである。僕の妻だ。

短い生涯を一生懸命鳴いているのが愛おしいんだとか。

『長い間土の中にいてやっと外に出られたと思ったら、7日間しか生きられないなんて切ないじゃない』と妻は言った。

もちろん蝉が成虫として生きられる時間が短いことは知っていた。

しかし7日間しか生きられないのにこんなに騒がしいのか、もし蝉の寿命が長かったらきっと耐えられないなと僕は思うのであった。

そんな僕が蝉を美しいと感じたのだ。

自転車のライトで照らしてよく見てみると、今まで見てきた蝉と全然違うことがよく分かる。

蝉のくせに透明感がある。

羽なんて新芽みたいな黄緑色からスミレみたいな青のグラデーションがかかっている。

気持ち悪いと思っていた顔だって愛らしく見えるから不思議だ。

興奮気味にiPhoneで写真を撮る。

家の陰で屈んでiPhoneで写真を撮っている男。完全に不審者である。通報されなくてよかった。

この感動を誰かに伝えたい!と思った時に先日の父からのLINEを思い出した。

内容は一枚の写真と『月下美人が咲いたよ』という一文のみ。

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父からのLINEで送られてきた月下美人の写真

最初はなんのことか分からなかった。

詳しく話を聞くと月下美人というのはサボテンの仲間で一年に一度(株の大きさによっては3〜4回咲くこともあるそう)一晩だけ花を咲かせるそう。

普段の父は僕にLINEを送ってこない。花が咲いたのが相当嬉しかったのだろう。

そしてそれを誰かに伝えたくて堪らなかったのだろう。

まさに今の僕の状況と同じだ。

食事とシャワーを済ませ寝室へ行くと寝ぼけながらも妻は僕の話を聞いてくれた。

写真を見るとこの蝉はクマゼミだと教えてくれた。

そして『この子はこのお家が建つ前からここにいたんだね』と言った。さすが蝉好きは目の付け所が違うなと素直に感心した。何年も前からこいつは幼虫の姿でこの土地にいたのだ。

小さな感動を伝えられる相手がいて、相手がそれを受け止めてくれる。

こんなささいなことがしあわせだと感じる。

そして僕自身に感動を伝えてくれる相手がいるということも同じくらいに幸せなことなんだ。

この夏は蝉がうるさく鳴いていても寛容になれそうだ。

こんな素敵な出会いがあるのならば、たまには残業も悪くない。

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たれお(@tare0talshil

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たれおroc69roc69
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